『もりのえほん』より
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一つの絵の中に、密かに隠されている別の絵を探させるパズルがかくし絵である。
安野光雅の著した『もりのえほん』(福音館書店)という絵本はすべての場面がかくし絵になっていて、それぞれの場面に主として生き物が複数かくれている。文章はまったくないが、順に見ていくと、次第に森の中に分け入り、それから抜け出すまでの森の中の変化が描かれていて、それを見ているだけでも興味深いが、さらに各場面で、そこにかくれているものを探す楽しみがある。この本は、1977年に最初月刊絵本の『こどものとも』259号として出され、後に単行本として刊行された。
1984年に刊行された今江祥智・文、宇野亜喜良・絵の『2杯目のスープ』(国土社)は、かくし絵童話集と銘打たれている。これは1980年11月から1983年5月まで毎月1回毎日新聞の特集版に掲載されたものを本にしたもので、童話につけられた挿し絵がかくし絵になっていて、それぞれ中に人の顔や動物がかくれているという趣向である。
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ライオンはどこに (W・G・H・ストライボスのコレクションより) |
こうしたりっぱな本が出てはいるが、かくし絵は日本ではあまり行われていないようで、江戸時代の遊び絵を集めた本の中にはまったく出てこない。一方、西洋では古くからさかんで、非常に多くの作品が描かれている。右はその一例で、W・G・H・ストライボスのコレクションにあるもの。描かれている人物は、ギリシア神話に出てくるヘラクレスである。ところで、金太郎にクマがつきもののように、ヘラクレスにはライオンがつきものである。そのライオンはこの絵の中のどこにいるだろうか。
かくし絵を探すコツは、まずそのままの位置で探して、見つからなければ、絵をさかさまか横向きにしてもう一度探すことである。そうすると、たいてい見つけることができる。
『こぶたのABC』より
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『PIGS from A to Z こぶたのABC』(アーサー・ガイサート著 うめもとのりこ訳 ジー・シー・プレス発行 1989年)という本では、各ページに、そのページのアルファベットが5個と、その前後のアルファベットが1個ずつ、合計7個かくれている。それを見つけてほしいというわけである。西洋では、アルファベットを絵にした『ABC絵本』が多数出版されているが、その中の異色本である。 |