・益智図
中国で、1878年(光緒4年)にタングラムと別のタイプの知恵の板の本が出版された。それが『益智図』(全6巻)である。これは[5]のように、正方形を15片に分割したものである。益智図も日本やヨーロッパに伝えられたが、タングラムのようには流行らなかった。なおわが国でも、寛政年間(1789〜1800)に19片からなる知恵の板がかなり流行したという文献があり、同類のものに15片のものもあった。
・ラッキーパズル(クロスパズル)
縦横の比が5:4の長方形を7片に分割した知恵の板は、わが国では「ラッキーパズル」の名で昭和4年(1935)頃から玩具として売られていて、今でも引き続き売られている。
このパズルが古くからあったことは、プロフェッサー・ホフマン著の 『新旧パズル』(Puzzles Old and New) (1893)にクロス(十字架)パズルとして載っていることから見ても明らかである。これは当初7片で十字形を作る問題だったための名称で、それが種々のパターンが作られて、クロスという言葉が名前にだけ残ったというわけである。[6]にその構成と、十字架のパターンを示す。
・十字架パズルとTパズル
いままで紹介してきた知恵の板は、いずれも1組何枚かの板を用いて、さまざまのパターンを作るものであった。しかし、すべての知恵の板がそうではなく、1組の板で単一のパターンを作るものもある。
中でも古典的なものが、[7]に示した十字架パズルである。ジェリー・スローカム、ジャック・ポタマンズ共著の本によれば、このパズルの現在見つかっている最も古い文献は、1857年に出版されたものだとのことである。なお、このパズルには、[8]のように1片少ない5片からなるものもあり、両者は並存していたようである。このパズルは、最近、パズランド匹見から5片のものが市販されている。
この十字架パズルの改良版と考えられるのが、今日でもよく売られている[9]のTパズルである。Tパズルはわずか4片でTの形を作るもので、簡単のように見えるが、やってみるとけっこう手こずる。傑作の一つといってよい。スローカム、ボタマンズの本によれば、現在知られている最も古いものは、1903年に出ているとのことである。 |