1−28.にせがねの問題 |
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第二次世界大戦も終盤に近づいた1945年のことだった。『アメリカン・マセマティカル・マンスリー』1月号に次のような問題が提起された。出題者はバージニア州のE.D.シェルである。 同種のコイン8枚と、てんびんが1台ある。コインのうち1枚はにせがねで、他のものより重さが軽い。てんびんを2回使うだけで、にせがねの存在を確認し、それを見つけだすことができるだろうか。 この問題は大きな反響をまき起こした。解答は同誌の8−9月号に掲載された。この問題は、ちょっと考えると、まずてんびんの左右の皿に4枚ずつコインを載せて重さを比較し、どちらか軽い方の4枚を2枚ずつてんびんの左右の皿に載せて重さを比較する。最後に軽かった方の2枚を1枚ずつ両皿に載せて重さを比較して、軽い方がにせがねと結論される。しかしこのやり方では、3回測る必要がある。2回で済ますにはどうしたらよいだろうか。 |
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正解を図で示すと、[1]のようになる。4枚ずつ測らずに、 3n-1 ≦ N < 3n である場合は、n回の測定でにせがねを見つけだすことができる。ただし、にせがねが混ざっていることが確実で、その確認をする必要がなければ、Nが 3n-1 < N ≦ 3n のときにn回の測定でにせがねを指摘することが可能である。 このにせがねの問題は、多くの数学者やパズル愛好家を熱中させた。そしてこの問題をさらに一般化した形の「コイン12枚の問題」が考え出されて『スクリプタ・マセマティカ』誌に発表された。その過熱ぶりは相当なものであったらしく、ドイツの潜水艦を沈めるために使われるべき多くの頭脳が、このパズルのために消費されたと書かれているほどである。 見かけは全く同じコインが12枚あるが、そのうち1枚はわずかに重さが異なっている。その重いか軽いかを知らずに、3回てんびんを使うだけでそのコインを指摘するには、どうしたらよいだろうか。 |
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この問題の解き方を[2]に示した。一般にN枚のコインがあって、Nの値が (3n-1 - 1)/2 ≦ N < (3n - 1)/2 のときにn回の測定でにせがねを確認することができる。 |