1つの図形をいくつかの断片に切り離し、これを適当に接続して別の図形を作るパズルを、切り継ぎパズルと呼んでいる。わが国でも江戸時代に著された中根彦循の「勘者御伽双紙」(1743年)にたくさんの例が載っている。
その1つに、正方形をn個並べた形の長方形を適当に切り継いで正方形にする一連の試みがあり、nが3の場合には右のようにしている。
1×3の長方形を正方形にする(クリックで拡大)
これに似た試みは、西洋でも古くから行われていて、10世紀ペルシアのアブル・ウェファは、3個の正方形を9片に切って、正方形にしている。
正方形3個から正方形を作る(アブル・ウェファの解)
イギリスのパズル研究家 H.E.デュードニーは、ウェファと同じことを6片に切ることで成し遂げている。西洋では、いかに片数を少なくて切り継ぎができるかというのが、興味の中心になっている。デュードニーは、この分野で優れた業績を残している。
正方形3個から正方形を作る(H.E.デュードニーの解)
しかし、近年、オーストラリアのハリー・リンドグレンが出現し、それまでの数々の記録を更新したのみか、新しい例を多数発表して、切り継ぎ問題が新たな脚光を浴びるに至った。切り継ぎ問題の魅力は、確実に行えるような決まった手法がなく、直観力が大いにものを言う世界だということで、幾何学の素養がなくても優れた洞察力があれば成功を納めることができる。とは言うものの、切り継ぎのやり方には、いくつかの手法がある。たとえば、正方形をn個並べた形の長方形を正方形にする中根彦循の試みだが、これはおそらく長方形の図の上にできあがりの正方形の形を重ねてみて、うまい分割が見つかるまで、位置をいろいろ変えてみたものであろう。nが5の場合を次に示す。
1×5の長方形を正方形にする
リンドグレンは彼の著書(増補版、1972年)の中で、自分のやり方を種々図で示しているが、第1の方法「帯法」は、2つの図形を、2辺が平行な図形に変換し、それを何個か帯状につなぐ。この2つの図形を重ね合わせて、最良の分割法が見つかるまで、お互いの位置をいろいろと変えてみるのである。次の図は正六角形を5片に分けて正方形にする方法を示している。
正六角形→正方形(帯法)
それぞれの図形でモザイクが作れるならば、第2の方法「モザイク法」が使える。たとえば次の図は正方形に4分の1の正方形を加えた形の図形を、5片に分けて正方形にするやり方を示している。
(正方形+1/4正方形)→正方形(モザイク法)
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