一つの単語から出発して、文字を一字ずつ変えていき、別の単語にするパズルをダブレットという。なお、途中のもの(中継語)も、すべてちゃんとした単語でなければならない。ダブレットはロンドンの女性週刊誌『ヴァニティ・フェア』の1879年3月から7月まで、懸賞パズルとして連載された。中継語は英語の単語にかぎり、固有名詞は認められない。また、通常の辞書に載っているものであること、最上級や比較級は認められない等の条件がつけられた。1.から4.は、その問題と解答例である。参考までに各単語の意味をカッコの中に示した。
1.お茶(TEA)を熱く(HOT)しろ
TEA(お茶)
SEA(海)
SET(一組)
SOT(飲み助)
HOT(熱い) |
2.釣れ(HOOK)! 魚(FISH)を
HOOK(釣れ)
HOOT(やじる)
HOST(主人)
HIST(だまれ)
FIST(げんこ)
FISH(魚) |
3.4(FOUR)を5(FIVE)にしろ
FOUR(4)
FOUL(不潔な)
FOOL(愚かな)
FOOT(足)
FORT(砲台)
FORE(全面)
FIRE(火炎)
FIVE(5) |
4.涙(TEARS)を微笑(SMILE)に
TEARS(涙)
SEARS(焼けこげ)
STARS(星)
STARE(見つめる)
STALE(新鮮でない)
STILE(踏み段)
SMILE(微笑) |
このパズルの考案者は、『不思議の国のアリス』などの著書で知られるルイス・キャロルである。
ルイス・キャロルは本名をチャールズ・ラトウィジ・ドジソンと言い、1832年にイギリスのチェシャー州で生まれた。本業は数学者であるが、言葉遊びや論理ゲームを好んだ。1865年に有名な『不思議の国のアリス』を出版、1872年にその続編に当たる『鏡の国のアリス』を出版して、数学者としてより童話作家として知られるようになった。1898年に亡くなっている。
ダブレットはもともとルイス・キャロルが退屈していた2人の少女のために考案したものだという。2つの単語を結ぶ中継語はできるだけ少ないほうがよいし、2つの単語と縁のあるものならなおいい。しかし、これは理想であって、実際に行うことはなかなか困難である。
ダブレットは日本語でも行うことができる。その一例として簡単な問題を出しておく。ここでは少し趣向を変えて、中継語にはヒントを載せておこう。
問題
単語 | ヒント |
ニンゲン ↓ | |
□□□□ ↓ | おおもと |
□□□□ ↓ | 抗体を作るもの |
□□□□ ↓ | 決まった財産 |
□□□□ ↓ | あざやかに輝く光 |
□□□□ ↓ | 決まって行われる |
ユウレイ | |
ダブレットに似ているものに、言葉の階段がある。これは単語を階段状に並べて、上の段と重なる箇所には同じ文字がくるようにするもので、日本語で例を示すと、
モミジ
ミジンコ
ジンコウ
コウスイ
スイカ
のように続けていく。
また、単語を一字ずつ減らすか、ふやしていって、順に別の単語にする遊びもある。この場合は、文字の順序が途中で変わってもよいとするのがふつうである。 |