15パズル[1]や娘パズル (箱入り娘) [2]のように、箱の中に収めた板を空所を利用して移動させ、所定の配列に並べ替える問題が、移動パズルである。
中でも最も有名なものは15パズルであろう。これは1878年に創案されたが、100年以上たった今でもさかんに売られているロング・セラー商品である。その爆発的な流行の仕掛人がサム・ロイドであることは前章で述べた。
ところで15パズルの数字板を箱から出して、でたらめな順にして箱に戻したとしよう。これを[1]の配列に戻すことのできる確率は50%である。見分け方は転倒の数を調べて、それが奇数か偶数か、パリティ(奇偶性)を見ればよい。
つまりその配列を調べて、それぞれの数字板ごとに、それより数が小さくて、それより後ろにあるものの個数を求めるのである。
たとえば1、2、3、4、5と並んでいたとすると、転倒箇所は一つもないから、転倒の数は0である。これが3、2、1、4、5となっていたとすると、3について転倒が2、2について転倒が1、1と4と5は転倒がないから、転倒の数は合計3である。
並べ替えが可能なのは転倒の数が奇数同士または偶数同士の場合である。サム・ロイドの14-15パズルは、転倒の数が1のものから0のものへ直す問題で、解けるはずがなかったことがわかる。
その後、[3]のようないじわるパズルが現れたことがある。これを相手に見せ、板を箱から出さずに滑らして順を崩してから、相手に元に戻させるのであるが、その折りにYOURのRを左上に持っていって相手に渡す。相手はこのRをそのままにしてRATEと組んでいくに違いない。しかしこれではパリティの関係で、金輪際完成はせず、相手は大いに苦しむことになる。
娘パズルはフランスの「赤いロバ」から派生したと思われる。昭和10年ころにはすでにあったが、いつごろ作られたものかはよくわからない。[2]は古典的な板の例であるが、書かれている文字には多くのバラエティがある。最低手数は81手である。また、近ごろでは板の構成にもバラエティのあるものがいろいろと作られている。
移動板パズルの種類は極めて多く、それだけを本にしたエドワード・ホーダンの『移動板パズル』 (“SLIDING PIECE PUZZLES”(1986)まで出版されているほどであるが、ここではもう一つ、1964年に日本で売られた「ライン・パズル」を紹介しよう。これは円を四等分した模様の板16枚を用い、これをA、B、C、Dのような模様になるように配置換えをするパズルで、同じ模様の板が4 枚ずつあるのが特色である。
●ラインパズルの解答例●※
- A→B 14手(筆者)
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- A→C 18手(武田進)
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- A→D 34手(筆者)
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- B→C 10手(筆者)
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- B→D 32手(加藤俊博)
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- C→D 40手(加藤俊博)
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