2−1.回文 |
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トマト、しんぶんし(新聞紙)、たしかにかした(確かに貸した)、わたしまけましたわ(わたし負けましたわ)のように、前から読んでも後ろから読んでも、同じになる語句を回文と呼んでいる。 むら草に 草の名はもしそなはらば なぞしも花の 咲くに咲くらむ は、回文和歌の最も古いものである。ところで、回文和歌で有名なものと言えば、 長き夜のとをのねぶりのみなめざめ 波乗り船の音のよきかな |
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であろう。正月二日の夜に、よい初夢を見るために、七福神乗合船の絵にこの和歌を添えたものを枕の下に入れて寝る習慣は、室町時代からあり、江戸時代にはなかなか盛んであった。現在でも神社でこの絵を授けるところがある。 次に川柳や俳句の回文例をいくつか示そう。 草の名は 知らず珍し 花の咲く |
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回文は現在でもさかんで、土屋耕一や島村桂一のように、数千題も作っている人もおり、中野美代子のように長文の回文を手がけている人もいる。
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なお、1.には、これをヒントにしたと思われる J・A・リンドンの『エデンにて I 』という小戯曲があって、60以上の台詞のすべてが回文になっている。中国語の場合は、一字で一語を形成しているので、作るのが容易で、完成度の高いものが多いという。[2]に一例を示す。 次は、日本語のローマ字による四行詩で、これは著者の作である。 OKI E IKO 沖へ行こう |
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ローマ字の回文については思い出がある。昭和32年(1957)のある日、パズルの大先輩である浦田繁松からローマ字の回文を教えてほしいという手紙が寄せられた。調べたが見つからなかったと返事すると、では作ってくれという、その結果作ったのが、次のものである。 Usagi no ko nigasu (ウサギの子逃がす) |