当事者以外の者には意味がわからないようにする手段またはそれによって作った文章等を暗号という。
暗号は多岐にわたっており、それに関する解説書も多数刊行されているので、ここでは暗号に関する話題をいくつか書いてみることにしたい。
探偵小説にはよく暗号が登場するが、その草分けはエドガー・アラン・ポーの短編小説『黄金虫』(1843年)である。その中に出てくる暗号文が次である。
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これは換え字式と呼ばれる方式による暗号で、元の文章の文字がほかの文字や記号に置き換えられている。この小説の後半で、解読の仕方がかなり細かく説明されている。
まず文章中に出てくる文字や記号の頻度を調べると、8が33回、;が26回、4が19回、……というようになっている。ところで、英語で最も頻繁に出てくる文字は e である。また e は2つ続いて ee となることがよくある。たとえば meet とか speed、 been というぐあいに。この文章を調べると、88となっているのが5箇所もある。そこで8を e だと仮定してみる。次に3つの記号の組み合わせがよく出てきて、しかも終わりが8(= e)であるものを探す。調べてみると、;48が7回も出てくる。これは the に違いない。
最後から2番目の;48(= the)の後の記号に注目する。ここは6つの記号のうち5つまでが、すでにわかっている。不明の文字を·で示すと、
t·eeth
となる。これを考察の結果、·は r で、
the tree thr···h
と推測される。このように解読していく。解読された文章を次に示す。
‘A good glass in the bishop's hostel in the devil's seat forty-one degrees and thirteen minutes northeast and by north main branch seventh limb east side shoot from the left eye of the death's-head a bee-line from the tree through the shot fifty feet out’
次にもう少しパズル的な暗号を紹介しよう。
正方形の厚紙の両面に、暗号のような記号がついている。これはいったい何を表しているのだろうか。
実は紙を斜めにして星印のついた角が上にくるようにし、紙の両角を親指と人差し指で軽く支えて、息を強く吹きかけて紙を回転させる。すると、紙の両面の記号が重なって見え、
I LOVE YOU
という文字になる。
問題
これはアメリカ人の考案したものの改良版である。原作は芦ヶ原伸之著『芦ヶ原伸之の究極のパズル』(講談社)に紹介されている。この問題は、作者は漢字のつもりで作っているが、とてもわれわれには漢字に見えないので、著者が作り直した。この文の中に中国式の避妊法があるのだが、はてさて? |